多くの日系大手企業には、福利厚生の一環として「従業員持株会」があります。
10%程度の奨励金がつくケースも多いため、積立投資をしている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、持株会は本当にお得なのでしょうか?
この記事で検証していきます。
そもそも個別株投資はするべきではない
当ブログでは、長期のインデックス投資をおすすめしています。 このブログの対象は日系大手サラリーマン、つまり「普通の人」です。普通の人は、本業や家族との生活もある中で、株に時間を割いている暇はほとんどありません。一方[…]
奨励金を正しく理解する
持株会は「10%の利回り商品」ではない
持株会の利回りは、株価の成長率に収斂する
それでは、持株会の利回りは何%でしょうか。
下の図をご覧ください。
先ほどと同様、自社株が毎年3%ずつ成長していくものとします。
この時、持株会の利回りは、長期的には対象会社の株価の動きに収斂していきます。
つまり、自社株の株価成長率がS&P500等のインデックスの利回り(約5~7%)を上回らない限り、長期では必ず損をします。
残念ですが日系の個別株が30年~40年という長期にわたってS&P500よりも高パフォーマンスであることは想定しづらいでしょう。
たしかに上記の簡易モデルにおいて、投資元本よりも増えることは間違いありません。
しかし、S&P500などのもっと得をする選択肢)があるのに選ばないことは機会損失に他なりません。
持株会は短期投資として活用しよう
それでは、持株会に入る価値は一切無いのでしょうか。
そんなことはありません。
上述の通り、長期ではS&P500 にボロ負けしますが、逆に短期(2年以内)であれば、持株会がS&P500をはるかに上回るパフォーマンスを発揮します。
つまり、持株会を活用した最適な投資戦略は「最大拠出額で買い付け、単元株になったら片端から売却する」というものです。
そして、売却して得た資金はS&P500等のインデックス投信に回し、自分で長期資産の形成を行ないましょう。
よくある質問
持株会で大儲けした先輩がいるんだけど
個別株が5~10年の短期スパンにおいてS&P500を上回ることは当然あります。
しかし、今後もその成長が続くかは誰にも分からず、自社株で儲けられるという再現性がありません。
また、そもそも「大儲けした」ということ自体を疑った方がいいです。
上述の通り、投資元本を上回るリターンを得ていても、機会損失が発生している可能性が高いです。
自分の会社がS&P500 を上回るパフォーマンスを出せばいいだけでは?
その通りなのですが、言うは易しです。
また、自分の会社が他より優れていると感じるのは認知の歪みの典型です。
上司の手前、持株会に入らないと気まずいんだけど
そういう定性的な理由で加入することに反対はしません。
実際、役員クラスは保有株式数なども公開されるため、持株会に入っていないと白い目で見られるなどの話も聞きます。
しかし、少なくとも20代~30代のうちは気にする必要はないでしょう。
持株会は、タマゴを1つの籠に盛ることになり、リスクが高すぎるのでは
ヤンピンは持株会に入ってるの?
ここまで書いておいて何なのですが、入ってません。
入っていない理由は2点です。
- 単元株になるたびに売却の手続きをするのが面倒くさい
- インサイダー規制により、短期で売却できない可能性がある
理由①について、私自身は投資にできる限り時間をかけたくないと思っており、定期的に売却の手続きを取らなければならない持株会を億劫に思っています。
(持株会から証券口座に移管する手続きがいまだに紙ベースなことも、面倒くささに拍車をかけています。)
また、理由②について、株価に影響を与えるプロジェクトに参加している場合などにインサイダー規制がかかり、単元株になったタイミングで売却できない場合もあり得ます。
自由な売却を制限されることは個人的に大変なストレスであるため、今のところ持株会に入らないことにしています。
さいごに
いかがだったでしょうか。
盲目的に持株会に飛びつくのではなく、きちんと理解した上で賢く利用したいものです。
以下も合わせてお読み頂けると、更に理解が深まると思います。
この4月に総合商社に入社した皆さま、ご就職おめでとうございます。この4月からも総合商社で勤め続けることを決めた皆さま、お疲れ様でございます。 さて、突然ですが皆さまは、持株会に入っているでしょうか。会社で生活してい[…]
東京電力・関西電力は、それぞれ約4万人・2万人の従業員を有する日本を代表する大企業です。震災やスキャンダル等もあって株価は奮いませんが、公共系の花形のような企業といっていいでしょう。 さて、突然ですが、そんな東電・関電[…]
この記事が、少しでも皆様のお役に立てたのであれば幸いです。