持株会は本当にお得?9割の人が勘違いしている奨励金の真実とは

多くの日系大手企業には、福利厚生の一環として「従業員持株会」があります。

10%程度の奨励金がつくケースも多いため、積立投資をしている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

しかし、持株会は本当にお得なのでしょうか?

 

この記事で検証していきます。

 

短期間で売却するなら加入する価値あり。長期投資対象としては不適切。
 

 

 

そもそも個別株投資はするべきではない

そもそも「持株会」などという名前がついていますが、特定の1社に投資する「個別株投資」に他になりません。
そして、長期(20年~40年)での資産形成を目的とするなら、個別株投資は非常にリスクが高いことを認識しておく必要があります。
 
市場全体(≒世界経済)が長期的に右肩上がりで成長していくことは信じられます。
しかし、特定の1社が右肩成長していくかどうかは全く分かりません。
 
市場全体vs特定企業
 
 
ヤンピン
GoogleやFacebookですら、30年後も成長を続けているかは全く分かりません。ましてや日系の自社株など…。
 
もしも奨励金がつかないのであれば、持株会は検討する価値すらないでしょう。
 
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奨励金を正しく理解する

持株会は「10%の利回り商品」ではない

新入社員の頃によく聞かされたセリフがあります。
10%もの利回りがある金融商品は他にない。持株会に入らないと損をする。」
 
これは多くの人が陥る勘違いですが、持株会に10%の利回りはありません。
なぜなら購入時(1回限り)に10%の奨励金がつくだけであって、その後の毎年の元本に奨励金がつくわけではないからです。
 
利回り10%と奨励金10%
 
下の図をご覧ください。
年3%成長する株式に対して、Yr0に100を一括投資した場合の簡易シミュレーションです。
持株会を経由して10%の奨励金を付けた場合と、市場で買い付けた場合(奨励金無し)を比較しています。
 
持株会イメージ
 
図から明らかなように、持株会の奨励金10%が意味するところは、「通常投資と比較して常に10%お得」という意味です。
断じて「持株会で自社株を買えば利回り10%になる」という意味ではありません
 
なお、上図はYr0に一括投資をしたケースを図示していますが、積立投資の場合も時点をずらして加算するだけのため、全く同様です。
 
 
スワン
ちゃん
当たり前じゃない…?
 
 
ヤンピン
当たり前のことですが、勘違いしている人が本当に多いです。
 

持株会の利回りは、株価の成長率に収斂する

それでは、持株会の利回りは何%でしょうか。

 

下の図をご覧ください。

先ほどと同様、自社株が毎年3%ずつ成長していくものとします。

 

持株会の利回り

 

この時、持株会の利回りは、長期的には対象会社の株価の動きに収斂していきます。

つまり、自社株の株価成長率がS&P500等のインデックスの利回り(約5~7%)を上回らない限り、長期では必ず損をします。

 

持株会 vs S&P500(長期)

 

 

残念ですが日系の個別株が30年~40年という長期にわたってS&P500よりも高パフォーマンスであることは想定しづらいでしょう。

 

持株会でも「損はしていない」という人がいます。
たしかに上記の簡易モデルにおいて、投資元本よりも増えることは間違いありません。
しかし、S&P500などのもっと得をする選択肢)があるのに選ばないことは機会損失に他なりません。

 

持株会は短期投資として活用しよう

それでは、持株会に入る価値は一切無いのでしょうか。

 

そんなことはありません。

上述の通り、長期ではS&P500 にボロ負けしますが、逆に短期(2年以内)であれば、持株会がS&P500をはるかに上回るパフォーマンスを発揮します。

 

持株会 vs S&P500(短期)

 

 
ヤンピン
もっと言えば、短期であればあるほど利回りは向上します。

 

つまり、持株会を活用した最適な投資戦略は「最大拠出額で買い付け、単元株になったら片端から売却する」というものです。

そして、売却して得た資金はS&P500等のインデックス投信に回し、自分で長期資産の形成を行ないましょう。

 

 
スワン
ちゃん
持株会って、社員の長期資産形成を支援する福利厚生だと思ってたわ…。
 
 
ヤンピン
持株会は踏み台にして、長期の資産形成は自分でしっかり行いましょう。
 

よくある質問

持株会で大儲けした先輩がいるんだけど

個別株が5~10年の短期スパンにおいてS&P500を上回ることは当然あります。

しかし、今後もその成長が続くかは誰にも分からず、自社株で儲けられるという再現性がありません

 

また、そもそも「大儲けした」ということ自体を疑った方がいいです。

上述の通り、投資元本を上回るリターンを得ていても、機会損失が発生している可能性が高いです。

 

自分の会社がS&P500 を上回るパフォーマンスを出せばいいだけでは?

その通りなのですが、言うは易しです。

また、自分の会社が他より優れていると感じるのは認知の歪みの典型です。

 

 
ヤンピン
このように身近なものを過度に評価してしまう認知の歪みは「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれています。

 

上司の手前、持株会に入らないと気まずいんだけど

そういう定性的な理由で加入することに反対はしません。

実際、役員クラスは保有株式数なども公開されるため、持株会に入っていないと白い目で見られるなどの話も聞きます。

 

しかし、少なくとも20代~30代のうちは気にする必要はないでしょう。

 

 
ヤンピン
持株会に加入しているかどうかを上司から聞かれたことは一度もありません。

 

持株会は、タマゴを1つの籠に盛ることになり、リスクが高すぎるのでは

これまでとは逆に、持株会には一切手を付けるべきではないとの意見です。
業績が悪化した際に、給与・ボーナスの減額と株価悪化による資産価値の下落のダブルパンチが来る、というよく知られた欠点です。
 
確かにその通りなのですが、この記事でお勧めしているのは短期での売却前提です。
最大エクスポージャーは単元株の金額程度(数十万円程度)ですので、そこまで気にする必要はないと思います。
 
しつこいようですが、長期間にわたってタマゴを1つの籠に盛ることはお勧めしません。
 

ヤンピンは持株会に入ってるの?

ここまで書いておいて何なのですが、入ってません。

 

 
スワン
ちゃん
いや入ってないんかい
 
 
ヤンピン
すみません。。
 

入っていない理由は2点です。

  1.  単元株になるたびに売却の手続きをするのが面倒くさい
  2.  インサイダー規制により、短期で売却できない可能性がある

 

理由①について、私自身は投資にできる限り時間をかけたくないと思っており、定期的に売却の手続きを取らなければならない持株会を億劫に思っています。

(持株会から証券口座に移管する手続きがいまだに紙ベースなことも、面倒くささに拍車をかけています。)

 

また、理由②について、株価に影響を与えるプロジェクトに参加している場合などにインサイダー規制がかかり、単元株になったタイミングで売却できない場合もあり得ます。

自由な売却を制限されることは個人的に大変なストレスであるため、今のところ持株会に入らないことにしています。

 

 
ヤンピン
しかしながら、短期での超高パフォーマンスを享受するために持株会に加入することは常に頭の片隅に置いています。
 

さいごに

いかがだったでしょうか。

盲目的に持株会に飛びつくのではなく、きちんと理解した上で賢く利用したいものです。

 

以下も合わせてお読み頂けると、更に理解が深まると思います。

 

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この記事が、少しでも皆様のお役に立てたのであれば幸いです。